4-3.スギゴケ目
(スギゴケ目、スギゴケ科、5属、29種)
「スギゴケの仲間の概略」:
庭の湿った土上や道路脇の土上など、また山地や高山などあちこちでよく見られる仲間です。コケ庭を作るときには、ウマスギゴケが主に使われます。理科の教科書にも蘚類の代表としてよく示されています。
日本に1科5属29種が知られています。
タチゴケ属Atrichum(5種):各地に普通
タチゴケモドキ属Oligotrichum(3種):亜高山帯
フウリンゴケ属Bartramiopsis(1種):亜高山帯
ニワスギゴケ属Pogonatum(13種):各地に普通
スギゴケ属Polytrichum(7種):各地に普通
「スギゴケの仲間の特徴」(体のつくり)
スギゴケの仲間の植物体は、杉の芽生えのような形をしています。茎が伸びて、短いものでは1cmにもなりませんが、大きいものでは、数センチの高さになります。上から見ると、細いひしん形の葉が四方八方に広がっています。もし胞子体がついていると、茎の先端から、茶色の針金のような朔柄が2-3cmほどの高さに伸びて、その先端に円筒形か四角に角張った形の朔をつけているはずです。
スギゴケの仲間であることを確かめるには、葉の腹面を見る必要があります。葉の腹面には、種によっては背面にも、「薄板」と呼ばれる薄い板状の突起が葉の基部付近から先端に向かって並んでいます。これはスギゴケ以外の他の仲間ではほとんど見られない形態です。慣れるとルーペでみてもわかります。
朔歯も、スギゴケの仲間だけに特異的な形態です。これらをルーペで観察すれば、スギゴケの仲間かどうかは、容易に確認することができます。
「観察・同定のポイント」(属の違いと種の違いを見分ける形質)
肉眼で:
朔の形は?(円筒状:Atrichum、Pogonatum、角張る:Polytrichum)
蘚帽に毛があるかないか(無い:Atrichum)
葉が乾燥すると
巻く(Pogonatum)
茎に接着する(Polytrichum)
ルーペで:
葉縁が内側に巻き込んで、薄板を覆うかどうか(Pogonatum)
葉尖が透明な棒状になるか
葉縁の鋸歯
葉鞘部の葉縁に毛がある(Pogonatum contortum)か、無いか。
顕微鏡で:
葉身細胞の薄板の横断面形態はどうか
(Pogonatum, Polytrichumのすべての種で、同定には必須)
属や種の同定を行うためには、葉の横断切片を作る必要があります。薄板が付く位置、薄板を構成する細胞の数や形に、属や種の特徴が現れているからです。
「身近な、分かり易い種」
@ウマスギゴケ(Polytrichum commune):コケ庭によく使われる;背が高くなる
@コスギゴケ(Pogonatm inflexum):
ウマスギゴケに似るが名の如く小さく、乾くと葉が巻縮する
@ハミズゴケ(Pogonatum spinulosum):茎・葉がほとんどない
@ナミガタタチゴケ(Atrichum undulatum):
葉身部背面に刺上の突起がでる。野外で、タチゴケ属の種が、葉が乾燥して巻縮しているときには、チョウチンゴケ科やタマゴケ科の種など他目の種とまぎらわしいことがあるので注意のこと。